「そこらじゅうに死人の山が」関東大震災の証言テープから読み解く“火災旋風”の脅威【news23】

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8ヵ月前

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「そこらじゅうに死人の山があった」。関東大震災で最大の犠牲者を出した「本所被服廠跡」。奇跡的に生き残った人の証言テープが見つかりました。震災の経験を語った生々しい証言とは? ■広い空き地に避難したのに・・・火災旋風の脅威 9月1日、関東大震災から100年を迎え、犠牲者を悼む大法要が営まれました。関東大震災では10万5000人が犠牲に。この慰霊堂には、5万8000人の遺骨が納められています。 慰霊堂があるこの公園は100年前、「本所被服廠跡」と呼ばれる、東京ドーム1.5倍もの大きさの空き地でした。多くの人が避難したこの場所で、最大の悲劇が起きました。 周囲の木造住宅から火の手が迫り、避難者が持ち込んだ家財道具に次々と引火。火災旋風が発生し、約3万8000人が焼け死んだのです。この火災旋風に巻き込まれた人たちの証言が、残されていました。 証言テープの女性 「『なんか火がついてきたぞ』っていう声も聞こえました。燃えるのが早かったですね。火の手の回りが。みんなが逃げているうちに、今度は竜巻ですね。何しろ薪を積み込んだようなものですからね。あの中(被服廠跡)はみんなの荷物が入りましてね」 168本ものカセットテープには、約200人の証言が収められています。1990年に、東京大学大学院の廣井脩教授(故人)が聞き取ったものです。 ■「人が空に舞い上がった」“火災旋風”の実験 JNNでは、被服廠跡で何が起きたのかを検証するため、専門家の監修の元、火災実験を行いました。 実験を監修 関本孝三 技術師 「当時は木密住宅が密集していました。空いているところが広場。(広場に)大火災旋風ができて、何万人もの人が死んでしまった」 実験では、サーモ映像も撮影できる最新のドローンを投入。液体燃料に火をつけてから、しばらくするとーー 向かって右側で炎が渦を巻き、いとも簡単に火災旋風が起きました。高温の炎で上昇気流が発生。周りの空気が巻き込まれ、回転する風の渦ができるのです。 ドローンで見ると、火が付いている場所から離れたところにまで、火災旋風が移動していることが確認できます。 別の角度から見ると、画面の左奥でも火災旋風が発生。右の方向にゆっくりと移動し、また戻ってくる様子がわかります。 火災旋風は住宅街を移動して、家々を焼き尽くすと言われています。火災旋風が恐れられる所以です。 火災のメカニズムに詳しい専門家はーー 実験を監修 東京理科大学 桑名一徳 教授 「建物(の模型)があることによって、風の流れが建物の模型がない場合と比べると、かなり複雑になっているように感じました。いろいろな所で火災旋風が発生する原因につながるかもしれないと感じました」 火災旋風は、人をも吹き飛ばします。 証言テープの女性 「人が飛んで空に舞い上がるのも見ましたね。その間に兄弟2人が飛んでいっちゃったんです。(母親は『ここでみんなで死ぬよりほかはないから」と言って、じっとしていたんですけど、妹に火の粉が降りかかって、熱がるんです。母が見かねて、『じゃあ逃げるだけ逃げてみよう』と。あっち行きこっち行きして、這っていたんですけどね』 火災旋風に吹き飛ばされた兄弟2人とは、二度と会うことはありませんでした。 ほかにも、火災旋風に関する証言があります。 証言テープの女性 「本当に人が飛ぶのを見ましたよ。ぴゅーっと。それで竜巻が、それがひどかったんです。周りが全部真っ赤で、もう死人の山で『苦しい』『助けてくれ』『水くれ』って、もう阿鼻叫喚なんですよね。そこら中、死人の山で」 実験を進めると、不思議な現象がーー 紙の破片が回転しながらカメラに近づいてきます。避難場所を模した、火が来ないはずの広場で、風が渦を巻き移動していく。これは最も危険な現象「見えない火災旋風」。 海外でも、その様子が捉えられたことがあります。アメリカの砂漠で行われたイベントの映像。燃えている巨大なオブジェの脇から、竜巻が次々と生まれ、砂漠の砂を巻き上げて移動していくのがわかります。これが“見えない火災旋風”です。 東京理科大学 桑名教授 「見えない・炎を伴わない火災旋風も、十分熱い場合があります。動いていきますから、炎が無いからといって何も起きないわけではないです」 証言テープにも「見えない火災旋風」が語られていました。 証言テープの女性 「太陽が真っ赤になっちゃったんです。「あ、太陽が真っ赤になった」なんて言っているうちに、ぶわーっと風が吹いてきたんです。その風が来て、砂塵を巻き上げるんですね。痛くていらんないんですよ」 「熱いと思いましてね。大八車・タンス・布団が落ちてくる」 内閣府は、今後30年以内に70%程度の確率で起きるとされる首都直下地震で、火災旋風が発生する恐れを指摘しています。決して、昔の出来事ではないのです。 ■荒川区は全ての中学校に「防災部」 高齢者に呼びかけ 100年たった今も、木造住宅の密集地域は多く残されています。都市防災が専門の東京工業大学の大佛俊泰教授は、密集地域での消火活動の難しさを指摘します。 大佛教授 「(大地震で)ポンプ車の数を大きく上回る火災、つまり同時多発火災が発生する。地震の揺れによって家屋倒壊が起きます。それがもとで道路閉塞が発生する。大渋滞が発生して、消防車の到着が非常に遅れる。非常に困難な状況にさらされる」 大規模火災を防ぐために大事なのは、住民による初期消火です。 東京・荒川区の荒川6丁目。 東京都が、火災や家屋倒壊による危険度が最も高いとしている場所で、消防団の活動も盛んです。しかし、高齢化が進み、担い手不足が懸念されています。 荒川消防団 服部 敏夫 団長 「(消防団員は)50代以上で、構成の比率が高くなっています。顔の見える関係をしっかり作っていくことが、(災害時に)スムーズに動けるきっかけになる」 荒川区の消防団は、子どもたちに親しんでもらおうと、可搬式ポンプやホースを使って作った大きな水溜まりに、どじょうを放すイベントを開催しました。 荒川消防団 箭内鉄也 分団長 「消防団を知ってもらって、将来消防団になってもらえるように、告知しながら、楽しんでもらえたらと思います」 他にもーー レスキュー部の生徒 「こんにちは、南千住第二中学校レスキュー部です」 近所に住む男性「こんにちは、いらっしゃい」 生徒たち「今日は学校便りを届けにきました」 男性「ご苦労様、いつもありがとうね」 荒川区では、区立中学校の全てに「防災部(レスキュー部)」という部活動があります。 災害時に支援が必要な高齢者と“顔見知り”になり、避難所での生活などを手助けできるようにしているのです。 近くに住む女性 「本当に年を取ると何が起こるか分からないので、若い人が頼りです」 また年1回、近くの保育園と合同で避難訓練も行っています。 荒川区立南千住第二中学校 レスキュー部の女子生徒 「地域の人となるべく多くの人と関わっていけるように、自分から挨拶したりすることを心がけています」 「地域全体が安全になれるような行動をとっていきたいなと思います」 100年前の大震災について語った証言テープ。悲惨な経験があったことを改めて知り、 地域の防災力を高めることが、次の震災に備える第一歩です。 ■どこが避難場所?“誰も聞いてなかった” 山本 恵里伽キャスター: 今回取り上げたこの168本のカセットテープ。収められている証言の中には地震発生直後に関するものもありました。 震災発生直後に関する証言 「突然、ゴーと響いたんですよね。すごい地響きがこう鳴りまして。棚のものはほとんど落ちて、タンスはみんなひっくり返っちゃって…」 「通りに出たって、みんなもう怪我人とかですね。家が両側からつぶれたり、けが人でもう血だらけになったり、だからもう右往左往ですよね…」 小川彩佳キャスター: とても具体的で非常に生々しく響いてくる証言です。 山本キャスター: その当時の様子が浮かび上がってくるようですよね。 こうした証言テープについて、証言テープを所蔵する東京大学大学院・関谷直也教授はこのように話しています。 「関東大震災が起こる前に『どこどこに避難しろ』例えば『被服廠跡に避難しろ』ということを誰も『聞いていない』と答えていた。だからこそ逃げ惑ってしまった」 「現代に生きる我々は、これほどの大規模な地震火災からの避難を経験していません」 「災害時は、あらかじめ避難する場所を決めておく必要があることを伝える重要なメッセージだと思います」 小川キャスター: 関東大震災から100年と聞くと、もう遠い昔のことのように感じてしまいますが、決して過ぎ去った危機ではなく、今も現実に起こりうる悲劇なんだなということが、より身近にそしてよりリアルに感じます。 こうした証言から学ぼうという姿勢を1人でも多く持ち続けることが、未来の被害を防いでいくことに繋がっていくのだと思います。 ▼TBS NEWS DIG 公式サイト https://newsdig.tbs.co.jp/ ▼チャンネル登録をお願いします! http://www.youtube.com/channel/UC6AG81pAkf6Lbi_1VC5NmPA?sub_confirmation=1 ▼情報提供はこちらから「TBSインサイダーズ」 https://www.tbs.co.jp/news_sp/tbs-insiders.html ▼映像提供はこちらから「TBSスクープ投稿」 https://www.tbs.co.jp/news_sp/toukou.html #ニュース #news #TBS #newsdig

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